英語版サイトを作るときに、たいてい失敗すること
翻訳したのに問い合わせが来ない。原因は英語の品質だけではありません。構造、情報の順序、そして日本語の原文をそのまま訳したことにあります。
英語版を作ったのに反応がない、という相談を何度も受けました。
多くの場合、英語そのものは悪くありません。問題は、日本語のページをそのまま英語にしたことです。同じ情報を、同じ順序で、同じ量だけ並べている。それが機能しない理由を説明します。
日本語のページと英語のページは、構造が違う
日本語のコーポレートサイトには一定の型があります。会社の姿勢や理念から入り、実績を積み上げ、最後に何ができるかを示す。読み手が順番に読むことを前提にした構造です。
英語圏の読み手は、その順序で読みません。最初の一画面で「これは何の会社か」「自分に関係あるか」を判断します。判断できなければ、下にスクロールしません。
だから、日本語の順序をそのまま訳すと、一番知りたい情報が三画面下に置かれることになります。英語の品質とは関係のないところで失敗しています。
翻訳ではなく、書き直しが必要な理由
日本語には、訳すと意味が薄くなる表現があります。
「お客様に寄り添い、最適なソリューションをご提案します」。これは日本語では一定の意味を持ちますが、英語に直訳すると、何をする会社なのか一切わからない文になります。英語圏では、これは内容がないと判断されます。
逆も起きます。英語の営業文をそのまま日本語にすると、押しが強すぎて信用されません。
つまり必要なのは翻訳者ではなく、両方の読み手を知っている書き手です。同じ内容を、それぞれの言語で成立する形に書き直す作業です。
機械翻訳をそのまま出したときに起きること
品質が上がったのは事実です。ただし、そのまま公開すると二つの問題が残ります。
一つは、専門用語と社名の扱い。自社の製品名やサービス名が訳されてしまう、業界の標準的な英語表現ではない語が選ばれる。これは読み手にすぐ伝わります。
もう一つは、文体の一貫性。ページごとに敬体の度合いが変わる、同じ概念が別の単語で書かれる。個々の文は正しくても、全体として素人が書いた印象になります。
機械翻訳は下書きとしては非常に有効です。そのまま公開する場合と、人が通して直した場合の差は、費用の差よりずっと大きく出ます。
技術的に必ずやること
見落とされやすいものを挙げます。
hreflang の設定。日本語版と英語版が互いを指す記述です。これがないと、検索エンジンが二つを別々の重複ページとして扱う可能性があります。
URL の分離。/en/ のようにパスで分けるか、サブドメインで分けるか。どちらでも構いませんが、同じ URL で言語を切り替える作りにすると、検索エンジンは片方しか認識しません。
自動リダイレクトをしない。ブラウザの言語設定で自動的に日本語版に飛ばす作りは、英語話者が英語版にたどり着けなくなります。切り替えは提示するだけにして、選択は読み手に任せてください。
フォントとレイアウト。英語は日本語より文字数が増えます。ボタンや見出しが崩れないか、実際の英文を入れて確認してください。日本語で組んだ幅に英語が入らない、というのは非常によくある崩れ方です。
問い合わせが来ない一番多い原因
英語版に問い合わせ導線がないことです。
日本語版には問い合わせフォームがあるのに、英語版はトップページだけ翻訳されていて、フォームは日本語のまま。あるいはフォームの必須項目が日本の住所形式や電話番号形式になっていて、海外から入力できない。
郵便番号が 7 桁固定、電話番号がハイフン区切り前提、都道府県がプルダウン。これらは全部、海外からの送信を物理的に止めます。
英語版を作ったら、必ず海外から実際に送信テストをしてください。ここで止まっている会社が非常に多いです。
最小限の作り方
全ページを訳す必要はありません。むしろ、少ないほうが機能します。
必要なのは四つです。何をする会社か。誰のために何を解決するか。実際にやった仕事の例。そして、動く問い合わせ手段。
この四つが英語で成立していれば、ページ数が少なくても問い合わせは来ます。逆に、五十ページを訳しても、この四つが弱ければ来ません。