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EUに売っているなら、アクセシビリティは 2025年6月から輸出要件です

欧州アクセシビリティ法は 2025年6月28日から各国で適用されています。対象は EU 域内に製品やサービスを出している事業者で、本社がどこにあるかは関係ありません。日本企業が見落としがちな適用範囲と、猶予が効く部分を整理します。

EU 向けに販売している日本企業と話していて、この話題が通じたことがほとんどありません。GDPR のときは大騒ぎになったのに、こちらはあまり知られていない。適用日はすでに過ぎています。

対象になっている会社は、対応済みか、対応していないかのどちらかです。検討中という状態は、法律上はありません。

欧州アクセシビリティ法とは何か

Directive (EU) 2019/882、通称 European Accessibility Act です。2019年4月に採択され、加盟国は 2025年6月28日から措置を適用することとされています。

対象となるサービスは、電子商取引、消費者向け銀行サービス、電子書籍、旅客輸送サービス、電気通信、およびそれらに使われる機器です。決済端末や自動券売機のようなセルフサービス端末も含まれます。

ウェブサイトやアプリの場合、実務上求められるのは欧州の整合規格 EN 301 549 が参照する WCAG 2.1 レベル AA 相当の水準です。

日本企業が見落とすところ

適用の基準は、事業者がどこに設立されているかではありません。EU 市場に製品やサービスを出しているかどうかです。

EU の消費者に販売しているなら対象です。本社が東京にあっても大阪にあっても、GDPR のときと同じで、それは免除の理由になりません。

「EU に法人はないので関係ない」という説明を何度か聞きましたが、これは正しくありません。域内に販売しているかどうかで判断されます。

効く猶予と、効かない猶予

慌てる前に、除外規定と経過措置を確認したほうがいいです。

サービスを提供する零細企業、具体的には従業員 10 人未満かつ年間売上高または年間貸借対照表総額が 200 万ユーロ以下の事業者は、サービス側の要件を免除されます(第 4 条 5 項)。ただしこれはサービス側だけで、製品側には及びません。基準を超えた時点で免除は消えます。

経過措置は第 32 条にあります。2025年6月28日より前から適法に使用していた製品を用いて同種のサービスを提供する場合、2030年6月28日までの経過期間が置かれます。2025年6月28日より前に締結されたサービス契約は満了まで継続できますが、最長で 5 年です。それ以前から使用されているセルフサービス端末は、経済的耐用年数の終わりまで、最長 20 年まで使用を継続できるとされています。

ここが重要です。これらは、すでに保有している設備や契約を守るための規定です。来年立ち上げる新しいサイトや、これから出すアプリには効きません。

日本国内の義務も 2024年に変わっている

同じ時期に、日本でも一つ変わっています。

2024年4月1日から、改正障害者差別解消法により、事業者による合理的配慮の提供が法的義務になりました。行政機関等はもともと法的義務でしたが、民間事業者は努力義務にとどまっていた部分です。

日本国内でよくある二つの誤解があります。

一つは、雇用のルールだと思われていることです。従業員に限りません。自社の製品やサービスの利用者、つまり顧客に対しても対象になります。

もう一つは、技術基準への準拠と同じだと思われていることです。JIS X 8341-3 は民間事業者にとって義務にはなっていません。義務なのは、障害のある人から社会的なバリアの除去を求められたとき、過重な負担がない範囲で対話をして解決策を検討することです。ただ実務的には、スクリーンリーダーで使えないプロダクトを持っている会社は、その対話が起きる確率も、こじれる確率も上がります。

技術基準そのものをどこまでやるかという話は、アクセシビリティ対応はどこまでやるべきかで別途書いています。

後付けが高い理由

アクセシビリティは、後から足すと作り直しに近くなります。最初から設計に入れると、ほぼ無料です。

この非対称性が議論のすべてなのですが、直感に反するので、理由を具体的に書きます。

アクセシビリティの失敗のほとんどは、非常に早い段階で、非常に安く決まっています。配色のコントラストが足りるかどうか。フォームの入力欄に本物のラベルがついているかどうか。押せる要素が本物のボタンなのか、見た目だけ整えた div なのか。見出しの構造が内容を表しているかどうか。キーボードだけで主要な操作が完了できるかどうか。

どれも、決めた瞬間には一円もかかりません。デザイナーが色を選ぶとき、実装者がタグを選ぶときの判断です。

ところがプロダクトが出来上がった時点では、その判断がコードベース全体で何百回も、しかもばらばらに行われています。改修の見積もりを見て発注側が怒るのはそのためです。ぼったくられているのではなく、一年分の小さな判断をまとめて一度に払わされているだけです。

多言語対応もまったく同じ構造で、だから私はこの二つを同じ会議で扱います。最初から日本語と英語で出すと決めておくのはほぼ無料です。二年後に英語を足すと、日本語の文字数に合わせて組んだレイアウトが全部壊れます。

今四半期にやること

EU に販売しているなら、まず適用範囲の確認からです。自社のどのサービスが対象か、零細企業の免除に該当するか、経過措置で時間が買えるか。ここは数日の作業で、緊急なのか重要なだけなのかがはっきりします。

次に、全部ではなく一本だけ監査します。売上を作っている経路を一つ選び、端から端まで試します。キーボードだけ、マウスなしで。次にスクリーンリーダーで。次に 200% 拡大で。外部に頼まなくてもできますし、報告書を読むより午後一回のほうが多くを学べます。

そして、ページではなく判断を直します。コントラストが足りないなら、それはページではなくトークンの問題です。ボタンがボタンでないなら、それはコンポーネントの問題です。エラーの発生源を直すことだけが、作業中に件数が増え続けるのを止めてくれます。

最後に、新規の作業の完了条件に書き込みます。ここを飛ばす会社が一番多く、そしてここだけが今後の傾向を変えます。

日本国内の義務については、コードの前に体制です。要望を受け取って、内容を理解して、返答できる人がいるかどうか。担当が決まっていなくて問い合わせメールが放置されているなら、HTML の状態はその会社の一番の問題ではありません。

もう一つの理由

2025年9月時点で、日本の 65 歳以上人口は 3,619 万人、総人口の 29.4% です。人口 4,000 万人以上の 38 か国で最も高く、イタリアの 25.1%、ドイツの 23.7% が続きます。

加齢による見えにくさや操作のしにくさに対する設計上の答えは、アクセシビリティ対応とほぼ同じです。タップ領域を大きく、コントラストを強く、文字を拡大できるように、入力の間違いを許容する。

つまり日本企業は、国内の人口構成から来る理由と、欧州の法規制から来る理由が、同じ作業を指しているという珍しい位置にいます。改修の見積もりが届く前に気づいたほうが、確実に安く済みます。

参考

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