デザインシステムを導入すべきタイミング
早すぎる導入は使われず、遅すぎる導入は移行が終わりません。判断の基準になる三つの条件と、最初に作るべき最小の範囲。
デザインシステムの相談で最初に聞くのは、いつ作るべきかという質問です。
答えは規模ではありません。同じことを二回以上決めているかどうかです。
導入が早すぎるとどうなるか
プロダクトが一つ、画面が二十、デザイナーが一人。この状態でデザインシステムを作ると、ほぼ確実に使われません。
理由は単純で、その規模では直接作るほうが速いからです。部品を定義して、ドキュメントを書いて、それを参照して組み立てるより、その場で作ったほうが早い。人は速いほうを選びます。
もう一つの問題は、まだプロダクトが固まっていないことです。半年後に方向が変わると、定義した部品は全部作り直しになります。早く作ったデザインシステムは、早く古くなります。
導入が遅すぎるとどうなるか
逆に、画面が数百、チームが複数、既存の作りがバラバラという状態から始めると、移行が終わりません。
新しい部品を定義しても、既存の画面を置き換える作業が膨大です。そして置き換えは事業の価値を直接生まないので、優先度が上がりません。結果として、新旧の部品が両方存在する状態が数年続きます。
これはデザインシステムがない状態より悪い場合があります。二つの正解が存在することになるからです。
導入すべき三つの条件
次のうち二つ以上が当てはまるなら、作る価値があります。
同じ判断を二回以上している。ボタンの見た目、余白の取り方、エラーの出し方。同じ議論が別の画面で繰り返されているなら、決めて書いておくべき段階です。
作る人が三人以上いる。デザイナーとエンジニアを合わせた人数です。二人なら口頭で揃います。三人を超えると揃わなくなります。
プロダクトが二つ以上ある、または今後増える。複数のプロダクトで見た目を揃える必要があるなら、共通の定義が必要です。
逆に、一つのプロダクトを一人か二人で作っていて、まだ方向が動くなら、まだ早いです。
最初に作るべき最小の範囲
いきなり全部を定義しないでください。順序があります。
一番目は、色と文字と余白。この三つは変更頻度が低く、全画面に影響します。ここだけ決めておくと、それだけで見た目の一貫性はかなり上がります。作業量も小さい。
二番目は、使用頻度の高い五つの部品。ボタン、入力欄、選択、通知、そして一覧の行。多くのプロダクトで、画面の大部分はこの五つでできています。
三番目は、状態。読み込み中、空、エラー、権限なし。ここを共通化しておくと、後で画面ごとに違う対応をすることがなくなります。
四番目以降は、必要になったときで構いません。使われる前に定義された部品は、たいてい使われません。
失敗する導入の特徴
私が見てきた範囲で、二年目に死ぬデザインシステムには共通点があります。
担当者がいない。作った人が別の仕事に移ると、更新が止まります。止まるとドキュメントと実物がずれます。ずれると誰も信用しなくなります。
追加する方法がない。新しい部品が必要になったとき、承認に六週間かかる仕組みだと、締切のあるチームは使いません。デザインシステムを使うほうが速い、という状態を作らないと勝てません。
部品の数を成果にしている。部品が何個あるかは意味のない数字です。測るべきは、実際に画面のどれくらいがシステムの部品でできているかです。この数字はたいてい、思っているよりずっと低く出ます。
発注する場合の注意
外部にデザインシステムを作ってもらう場合、成果物を「部品一式」にしないでください。
必要なのは、部品と、それを運用する方法です。新しい部品を誰がどう追加するのか、既存の画面をどの順で置き換えるのか、判断に迷ったときの原則は何か。これが入っていない納品物は、一年後には使われていません。
デザインシステムはプロジェクトではなく、社内向けのプロダクトです。利用者はあなたの同僚で、その人たちには締切があり、使わないという選択肢があります。そのつもりで扱えば、二年目を越えます。