発注前に用意しておくと、見積もりの精度が上がる資料
RFP を書く必要はありません。四つのことを紙に書いておくだけで、見積もりの幅が狭くなり、進行中の手戻りも減ります。
見積もりが会社ごとに大きく違うとき、原因は相手側ではなく、渡した資料にあることがほとんどです。
かといって、立派な RFP を作る必要はありません。実務上、四つのことが書いてあれば十分です。そして、この四つを書く作業自体が、社内の認識を揃える役に立ちます。
一、一番大事な行動を一つ書く
このプロダクトで、利用者がやることのうち、一番大事なものは何か。一つだけ書いてください。
「予約を完了する」「見積もりを依頼する」「進捗を確認する」。この粒度で構いません。
一つに絞れないという場合、それが最大の問題です。優先順位が決まっていないプロダクトは、画面ごとに何を目立たせるかが決まりません。結果として、全部が同じ大きさで並ぶ画面になります。
作る側から見ると、この一行があるかないかで、提案の質が変わります。
二、使う人の現状を書く
誰が使うのか。そしてその人は、今この作業をどうやっているのか。
二つ目が重要です。今やっていないなら新しい習慣を作る話になり、今エクセルでやっているなら置き換えの話になり、今他社のサービスでやっているなら乗り換えの話になります。この三つは全く違う設計になります。
理想の利用者像ではなく、実際の人の現状を書いてください。実在する誰か一人を思い浮かべて書くと、精度が上がります。
三、動かせない制約を書く
既存のシステム、社内のルール、決まっている技術、変えられないブランド。
ここを言わずに進めると、提案が出てから「それは使えません」となり、やり直しになります。制約は早く出すほど安く済みます。
よくある見落としは、社内の承認プロセスです。デザインの確認に何人が関わり、一回の確認に何日かかるか。これはスケジュールに直接効くので、書いておくと期間の見積もりが現実的になります。
四、いつまでに何が動いていればいいのか
「いつまでに全部」ではなく、「いつまでに何が」です。
この書き方をすると、削れるものが見えます。逆に「全部」と書くと、削る判断ができないまま進行し、締切が近づいてから慌てて削ることになります。そのとき削られるのは、たいてい品質です。
理想は、最初の締切を「一番大事な行動が、一人の利用者に対して最後まで通る」に設定することです。これができていれば、残りは後から足せます。
書かなくていいこと
逆に、書かないほうがいいものもあります。
画面の一覧。画面数を先に決めると、そこから設計が始まってしまいます。必要な画面は、やることが決まった結果として出てくるものです。
具体的な実装方法。技術指定が必要な制約は上の三番に書けば足ります。それ以外の実装方法まで指定すると、良い提案を潰します。
参考サイトを大量に。二つか三つで十分です。多すぎると、何を良いと思っているのかが伝わりません。そして「このサイトのここが良い」と理由を一行足してください。理由がないと、見た目の模倣になります。
この四つを書くと何が変わるか
三つ変わります。
見積もりの幅が狭くなります。各社が同じものを想定するようになるからです。
進行中の手戻りが減ります。決めるべきことが先に決まっているからです。
そして、社内の合意が先に取れます。実はこれが一番大きい効果です。四つを書く過程で、社内で意見が割れている箇所が表面化します。それが外注の途中で表面化するより、はるかに安く済みます。
決められない場合
四つのうち、どうしても決まらないものがある場合。それを隠さずに書いてください。
「利用者の現状が把握できていない」と書いてある資料は、正直で、対応もできます。調査を含めた提案が返ってきます。
一方、わからないまま埋めた資料は、間違った前提で見積もられます。そして、その間違いは作業が始まってから発覚します。
わからないことをわからないと書くのは、弱さではありません。見積もりの精度を上げる情報です。