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デザインの予算を社内で通すために、稟議書に書くこと

見積を持ち帰ったあと、社内で止まる案件がかなりあります。止まる理由はほぼ決まっていて、金額ではありません。決裁者が判断できる形になっていないだけです。実際に通った書き方を、順番で書きます。

見積を出したあと、担当者の方が社内で苦戦して案件が止まる。これがかなりの頻度で起きます。

止まる理由は、ほとんどの場合、金額ではありません。決裁者が判断できる材料が揃っていないからです。担当者は現場の課題を知っているので必要性がわかる。決裁者は現場を見ていないので、提出された紙だけで判断します。その紙が「デザインを改善したい」で終わっていると、判断のしようがありません。

外注される側の立場から、通った案件と止まった案件の違いを書きます。

決裁者が実際に見ているもの

三つです。

いくらかかるか。 これは書かれています。

やらなかったらどうなるか。 これがほぼ書かれていません。

成功したかどうかを、いつ、何で判断するか。 これも書かれていません。

二つ目と三つ目が空欄の稟議は、決裁者から見ると「今期やらなくてもいい案件」に見えます。悪意ではなく、比較の対象がないので後回しにするしかない。同じ会議に、やらないと工場が止まる案件が並んでいるからです。

「やらなかったらどうなるか」の書き方

ここは推測でも構いません。ただし数字にしてください。

たとえば申込フォームの改善なら、こう書けます。

現在、フォームに到達した人のうち完了しているのは何%か。離脱している人数は月あたり何件か。そのうち何件かが問い合わせとして電話に流れていて、一件あたりの対応時間は何分か。

この三つは、たいていの会社が既に持っているデータです。Google Analytics と問い合わせ管理と、担当部署への聞き取りで出ます。新しく調査する必要はありません。

書けると何が変わるか。「改善したい」が「月に何百件を取りこぼしていて、その一部が電話対応の人件費になっている」に変わります。前者は好みの話に見え、後者は経営の話に見えます。

数字が粗いことを気にしないでください。決裁者は精度を見ていません。担当者がその業務を数字で捉えているかどうかを見ています。

一番効くのは、やらない案の併記

これは実際に効きます。

案を三つ書く。全部やる案、一部だけやる案、やらない案。それぞれの金額と、それぞれの結果を書く。

やらない案に金額として 0 円と書き、結果の欄に、現状が続くという意味を書く。先ほど出した離脱の数字がここに入ります。

これをやると、決裁者の仕事が「承認するか、しないか」から「三つのうちどれを選ぶか」に変わります。人は前者を保留できますが、後者は保留しにくい。選ばないという選択も、明示的に選ぶ形になっているからです。

範囲を狭くしたほうが通ります

大きい提案のほうが通りやすいと考える方がいますが、逆です。

金額が上がると決裁のレイヤーが上がり、レイヤーが上がると、その案件を理解している人から遠くなります。部長までで決まる金額と、役員会に上がる金額では、必要な説明が別のものになります。

最初の一件は、部長決裁で収まる範囲に切ってください。一つの画面、一つの業務、一つのフォーム。効果が測れて、三か月以内に結果が出るもの。

それが数字で示せると、二回目の予算は最初の何倍かの規模でも通ります。私が関わった案件で、大きく進んだものはほぼ全部この順序でした。最初から大きく始めて通ったケースは、思い出せる限りありません。

見積の中身を、社内向けに書き換える

これは私たち受注側の責任でもあります。

見積書は工程で書かれます。調査、設計、実装、検証。これは作業としては正しいのですが、決裁者には読めません。何にお金を払うのかがわからないからです。

社内向けには、成果物で書き直してください。

「設計 60 時間」ではなく「申込フォームの新しい画面設計と、その検証結果」。「調査」ではなく「現在どこで離脱しているかの特定」。

必要なら、私に社内向けの資料を書き直すよう頼んでください。断る制作会社は少ないと思います。案件が通らないと、こちらも仕事になりません。

言わないほうがいいこと

「デザインを刷新する」は避けてください。決裁者には、見た目を変える話に聞こえます。見た目を変える話は、費用対効果を説明できない話として扱われます。

「UX を改善する」も避けたほうがいいです。社内に UX という言葉の定義が共有されていない場合、意味を持ちません。定義の説明から始めることになり、そこで会議の時間が終わります。

代わりに、変わる数字を書いてください。完了率、対応件数、処理時間。デザインという言葉を一度も使わずに稟議を書けるなら、それがいちばん通ります。

逆に、社内で止まったほうがいい案件

最後に正直なことを書きます。

決裁で止まる案件の一部は、止まって正解です。何を解決するのかが決まっていない案件は、予算がついても結果が出ません。私はその状態で受注したことがあり、双方にとって良くない結果になりました。

稟議書が書けないのは、書き方の問題ではなく、まだ何を解決するか決まっていないことのサインである場合があります。その場合は、金額の小さい調査から始めるほうが早いです。

決めるところから相談していただいて構いません。実際、その段階からの依頼がいちばん多いです。

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