UI/UX デザインの外注費用は、何で決まるのか
同じ要件を出しても、見積もりが 80 万円と 600 万円に分かれます。その差はどこから来るのか、そして安い見積もりが何を含んでいないのかを説明します。
デザイン会社に相見積もりを取った方は、ほぼ全員が同じ経験をします。同じ資料を渡したのに、返ってきた金額が数倍違う。
これは相手が適当に値付けをしているからではありません。渡した資料だけでは、作るものが確定していないからです。
見積もりが割れる本当の理由
デザインの見積もりは、作業量ではなく「決まっていないことの量」で決まります。
画面数が 20 と書いてあっても、その 20 画面がどういう状態を持つのかは書かれていません。エラーのとき、データが空のとき、通信が切れたとき、権限がないとき。実際に作るのはその全部です。20 画面という数字は、実際には 60 から 80 の状態を意味することが珍しくありません。
高い見積もりを出した会社は、その 60 を数えています。安い見積もりを出した会社は、20 を数えています。作業が始まると、後者は必ず追加見積もりになります。
金額に含まれているものを分解する
比較するときは、総額ではなく次の項目が入っているかどうかを見てください。
要件の整理。何を作るかを決める工程です。ここが見積もりに入っていない場合、決めるのは発注側の仕事になります。社内に決められる人がいるなら安く済みます。いないなら、必ず後で時間として跳ね返ります。
状態の設計。エラー、空、読み込み中、権限なし。ここを含まない見積もりは、実装段階で「この場合どうしますか」という質問が数十件届きます。
実装との受け渡し。デザインデータを渡して終わりなのか、実装中の質問に答えるのか、出来上がったものを確認するのか。ここを含まない案件は、デザイン通りにならないまま公開されます。
修正の回数。無制限と書いてある見積もりは、たいてい無制限ではありません。何回までか、何をもって 1 回と数えるかを確認してください。
相場の考え方
金額そのものより、単価と期間で考えたほうが判断を誤りません。
日本のデザイン会社の場合、担当者一人あたり月あたりで見積もられることが多く、フリーランスと制作会社と大手代理店では、同じ作業でも数倍の差があります。差の中身は、体制の厚さ、代替要員の有無、そして責任範囲です。
安いほうが悪いわけではありません。小さい案件に大手を使うと、実際に手を動かす人ではなく管理する人の分を払うことになります。逆に、社内に判断できる人がいない状態で一番安いところに出すと、決める人が誰もいないまま進行します。
安い見積もりが含んでいないもの
私が実際に見てきた範囲では、次の三つが抜けていることがほとんどです。
一つ目は、日本語以外の言語。後から英語版を足すのは、最初から二言語で設計するより高くつきます。文字数が変われば入らなくなるからです。
二つ目は、アクセシビリティ。後付けは作り直しに近くなります。
三つ目は、運用。作った後に画面を足すとき、誰がどうやって足すのか。ここが決まっていないと、二年後には最初のデザインとは似ていない画面が並びます。
発注側ができること
見積もりの精度は、渡す資料の精度で決まります。金額を下げたいなら、値切るより情報を増やすほうが効きます。
具体的には、次の四つを先に書いておくと、見積もりの幅がかなり狭くなります。
- このプロダクトで一番大事な行動は何か
- 誰が使うのか、その人は今どうやってその作業をしているのか
- 既存のシステムやデザインの制約は何か
- いつまでに、何が動いていればいいのか
四つ目が特に重要です。「全部」ではなく「何が動いていればいいのか」を書けると、削れるものが見えます。
一番高くつく発注のしかた
要件を決めずに発注して、途中で決めることです。
これは金額の問題というより、順序の問題です。作り始めてから方向が変わると、それまでの作業がそのまま無駄になります。デザインは物理的な制作物ではないので作り直しが簡単だと思われがちですが、実際には作り直しのたびに、それに合わせた実装も作り直しになります。
決めてから作る。決められないなら、決めるところまでを別の小さい発注にする。この二つのどちらかにするだけで、総額はかなり変わります。