補助金を使って AI 導入を進めるときに、先に決めておくこと
デジタル化・AI 導入補助金と、人材開発支援助成金のリスキリングコース。使える制度の概要と、申請より先に決めておかないと通らない、あるいは通っても成果が出ない部分。
AI の導入を検討している会社から、費用の相談を受けることが増えました。使える制度はあります。ただし、制度の話をする前に決めておくべきことがあり、そこを飛ばすと申請が通らないか、通っても成果が出ません。
先に制度、次に落とし穴という順で書きます。
使える制度の概要
デジタル化・AI 導入補助金。2026 年から、それまでの IT 導入補助金がこの名称に変わり、AI の導入が明示的に対象になりました。補助額は最大 450 万円、補助率は最大 4 分の 3 です。
人材開発支援助成金、事業展開等リスキリング支援コース。社内の教育訓練にかかる費用を、最大 75% まで補助します。AI を入れたが誰も使えない、という状態を避けるための制度として使えます。
金額も枠も年度ごとに変わります。上の数字は方向性として読んでください。申請の時点で必ず最新の公募要領を確認する必要があります。
制度が向いている使い方、向いていない使い方
補助金は、費用の一部を後から埋めるものです。先に払う必要があり、審査があり、報告義務があります。
向いているのは、やることが決まっていて、費用が読めて、成果を説明できる導入です。制度側が求めているのもそれです。
向いていないのは、何をやるか決まっていない状態で、とりあえず予算を取りに行く場合です。申請書に書く内容が具体的にならないので通りにくく、通ったとしても、報告の段階で何を達成したか書けません。
補助金は、決めることを代わりにやってくれません。むしろ申請の過程で決めることを迫られます。それは面倒ですが、実際には良いことです。
申請より先に決めておく三つ
どの業務を、どこまで変えるのか。部署をまたぐ大きなテーマではなく、一つの業務を最初から最後まで。範囲が広いほど申請書が抽象的になり、審査でも実行でも不利です。
成果を何で測るのか。時間なのか、件数なのか、エラー率なのか。ここが決まっていないと、報告の段階で困ります。そして測れない導入は、社内で二回目の予算がつきません。
誰の仕事が増えるのか。AI の導入では、楽になる人と、確認作業が増える人の両方が出ます。後者を書いていない計画は、現場で止まります。これは審査の話ではなく、成果の話です。
よくある失敗
ツールを買って終わりにする。補助金はツールの購入に使いやすいので、導入がツール選定になりがちです。しかし、成果が出ない原因はツールの性能ではなく、業務に組み込まれていないことです。買っただけでは何も変わりません。
教育を後回しにする。使う人が使えない状態で導入すると、数か月後に使われなくなります。リスキリングの助成が別にあるのは、そこが実際に問題になるからです。導入と教育は同時に計画してください。
間違えたときの扱いを決めていない。AI が誤った出力をしたときにどうするか。ここが決まっていない導入は、社内の承認段階で止まります。技術ではなく、責任の所在の問題です。
進め方
現実的な順序を書きます。
一つの業務を選び、現状を数字で把握する。何にどれだけ時間がかかっているかを、導入前に測っておく。これがないと、後で効果を主張できません。
小さく試す。この段階では補助金を待たずに、自社の範囲でできる規模で構いません。
試した結果をもとに、申請する。ここまで来ていると、申請書に書く内容が具体的になります。審査でも有利ですし、何より社内で説明しやすくなります。
補助金の前に考えたほうがいいこと
日本の大企業の AI 導入率は 87% です。しかし、期待を超える成果が出たと答えたのは 9% でした。導入していない会社より、導入したのに効果が出ていない会社のほうが圧倒的に多いということです。
補助金は導入の費用を下げます。導入率を上げることには役立ちますが、9% を上げることには直接は効きません。
だから、制度を調べる時間と同じくらい、何をどう変えるのかを決める時間を取ってください。そちらのほうが、最終的な費用対効果には大きく影響します。