Claudeをイエスマンにしない方法:本音の反対意見を引き出す
Claudeが同意しがちな理由と、質問の仕方、アカウント全体の指示、プレモーテム、複数視点のスキルで本音の反対意見を引き出す方法です。
Claudeに「このアイデアどう思う?」と聞くと、たいていは肯定的な答えが返ってきます。励まされているように感じますが、実際には自分の意見が、少し上手な文章になって戻ってきているだけのことが多いです。日本の職場でいえば、上司の顔色を見て忖度する部下のようなものです。お礼のメールなら問題ありませんが、価格設定や採用、新規事業の判断でこれをやられると危険です。
この問題の多くは、聞き方を変えるだけで改善できます。ここでは、Claudeを、必要なときは本音で反対してくれる壁打ち相手にする方法を紹介します。
なぜClaudeは同意しがちなのか
言語モデルは人間の評価をもとに学習する部分があり、人は自分に同意してくれる答えを高く評価しがちです。Anthropicはこの傾向について研究を公開しています。最近のモデルはかなり改善されていますが、質問の仕方で「こう言ってほしい」が見えてしまうと、やはりそちらに引っ張られます。
つまり、イエスマン問題の半分以上は、質問する側から始まっています。
ステップ1:自分の希望を質問に混ぜない
「月額料金を上げようと思うんですが、いいですよね?」と聞けば、欲しい答えを教えているのと同じです。代わりにこう聞きます。
2つの案で迷っています。同じ基準で両方を評価し、どちらかを推薦してください。
私はまだどちらとも決めていません。
案A:[説明]
案B:[説明]
評価基準:今後6か月の売上、解約リスク、実装の手間
本当に判断してくれているかを確かめる簡単な方法があります。別々のチャットで、案Aと案Bをそれぞれ「自分のおすすめ」として相談してみてください。両方とも熱心に賛成されたら、それは同調です。本当に判断していれば、どちらかを選んでいるはずです。
ステップ2:アカウント全体の指示で「正直モード」を標準にする
Claudeアプリでは、すべての会話に適用される指示を設定できます。公式ヘルプによると、設定画面の「Instructions for Claude」の欄に書きます。長いルールの羅列は効果が薄れるので、短く書くのがコツです。
私がアイデアや計画、成果物を見せたときは、良い点より先に最大の弱点を指摘してください。
私と意見が違う場合は、遠慮せずにそう言って理由を説明してください。
私が反論しても、新しい事実や論拠がない限り、正しい答えを変えないでください。
自信がないときは、自信がないとはっきり言ってください。
特に大事なのは3行目です。よくあるのは、Claudeが良い答えを出したのに、こちらが根拠なく「いや、そうかな?」と返しただけで意見を引っ込めてしまうパターンです。新しい情報がない限り意見を変えないよう伝えておくと、これがかなり減ります。
厳しいフィードバックが欲しいのは特定の仕事だけ、という場合は、プロジェクトの指示に書きます。プロジェクトの指示はそのプロジェクト内のチャットにだけ適用されるので、「レビュー用」のプロジェクトを作っておけば、普段のチャットはいつもどおりのままです。
ステップ3:「どう失敗するか」を聞く
「これで大丈夫?」は「はい」を誘います。失敗の仕方を聞くと、Claudeは考え始めます。私がいちばんよく使うのは、プレモーテム(事前の検死)と呼ばれる方法です。
今から半年後、この計画が失敗したと仮定してください。
いちばんありそうな失敗までの流れを、順を追って書いてください。
そのうえで、その流れが前提にしている仮定を3つ挙げ、
それぞれを今週中に一番安く確かめる方法を教えてください。
計画:[貼り付け]
日本の会議では、場の空気で反対意見が出にくいことがあります。稟議や企画会議の前にこのプロンプトを通しておくと、会議で聞かれそうな厳しい質問に先回りして答えを用意できます。
ステップ4:複数の視点で見る
どれだけ正直でも、ひとつの答えはひとつの視点にすぎません。Andrej Karpathy氏のLLM Councilというプロジェクトは、複数のモデルに同じ質問をし、誰の答えかを伏せたまま互いに評価させ、最後に議長役がまとめるという仕組みです。これに近いことを、Claude Codeのスキルで再現できます。
~/.claude/skills/council/SKILL.md を作ります。
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name: council
description: 実際に影響の大きい意思決定を複数の視点から検証する。
「会議にかけて」と言われたときや、選択肢が複数ある重要な判断の相談で使う。
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$ARGUMENTS の判断について会議を開いてください。
1. 判断内容、選択肢、失敗したときの影響を3行でまとめる。
情報が足りなければ先に質問する。
2. サブエージェントを4つ並行で使う。それぞれにはこの会話ではなく
判断内容のまとめだけを渡し、役割をひとつずつ与える。
懐疑役:失敗するいちばんの理由。
部外者役:背景を知らない人から見て分かりにくい点。
実務役:2週間で実行するなら何が必要で、どこで詰まるか。
楽観役:想定以上にうまくいったら何が起きるか。
3. 役割名を消して回答をAからDとし、別の新しいサブエージェントに渡して、
どれが最も説得力があるか、どれに最大の盲点があるか、全員が見落とした点は何かを評価させる。
4. 結論を書く:推薦する案、それへの最も強い反論、判断が変わる条件、
48時間以内にやる最初の一歩。褒め言葉から始めない。
あとは /council 有料プランを今出すか、リニューアル後にするか のように入力します。フォルダ名がそのままコマンドになります。サブエージェントはそれぞれ新しいコンテキストで動き、それまでの会話を見ていないので、あなたが前のめりになっていた空気に引きずられません。
Claudeアプリでも、同じフォルダをzipにしてスキルとしてアップロードすれば使えます。ただしアプリでは1つの会話の中で役割を演じ分ける形になるので、視点の独立性はやや弱くなります。それでも、ひとつの答えだけで決めるよりずっとましです。
使いどころは「間違えると高くつく判断」
SNSの投稿文や簡単な調べものに、ここまでする必要はありません。価格、リリース、採用、数週間を失うような判断に絞って使ってください。そして、はっきり反対されたときに、同意してもらえるまで質問を言い換えたくなる気持ちには逆らってください。その居心地の悪さこそが、この方法の価値です。
次にClaudeに相談する判断で、まずはステップ1だけ試してみてください。自分の希望を質問から外し、両方の案を同じ基準で評価してもらうだけで、答えの質感が変わるはずです。